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日経デスクトップ BizPlus - 「地殻変動を起こす地域メディア」

地域メディアの地殻変動
「マーケティング・ホライズン」 '04.12月号/日経ネット転載

 最近、地域メディアのなかでも、無料タウン誌が元気である。リクルートの「ホットペッパー」は、20〜30代のアクティブな可処分所得の高い女性を対象に、地域密着型クーポンマガジンとして全国で約500万部が発行され、広告売り上げ約300億円を達成している。

 無料宅配紙「ぱど」は、米国の“売ります”“買います”のフリーペーパーを参考に85年に社内ベンチャーとしてスタートし、現在は、フランチャイズシステムなども導入。全国208エリア、売り上げ75億円、発行部数約1200万部で、無料宅配誌として世界一とギネスブックにも認定されている。

 その他にも、讃岐うどんブームを全国に巻き起こした「麺通団」が仕掛けるタウン誌など、お店の案内、求人情報、不動産広告、から夜の世界まで百花繚乱(りょうらん)である。

 地域メディアといえども、その収益基盤は広告に依存している。広告メディアの機能は、企業の商品・サービスの認知の向上に寄与するが、商品の販売や消費者の購買にどの程度結びついているかは把握できない。

 ところが、これらの地域メディアは、広告投資に対してどの程度の売り上げが見込めるかという“ADとSALEの相関把握”のビジネスモデルを開発したのである。例えば、タウン誌が来店促進のギミックとしているクーポンは、店の知名度アップだけでなく来店誘引もし、来店客数も予測できる。

 メディアは違うが、ショッピングチャネルも然りである。また、地域メディアに対する生活者の意識の変化もある。いままで企業側をもっていたメディアの情報発信機能に個人が参加し、生活者がイニシアティブを持ち出したのである。

 地域メディアといわれるものは、地上波TV、新聞、AM/FMラジオ、タウン誌を含めた雑誌・宅配紙、CATV、地域情報WEBなどである。これまでのマスコミの構造は、有力マスコミ資本により系列化され、地域メディアは、その下部構造に位置するというヒエラルキーを形成していた。

 ところが、この構造が地殻変動を起こし始めている。即ち、生活者のメディア接触態度の変化に加え、地上波のデジタル化、ブロードバンドインフラの進化、そして関連する法規制の動きである。

 メディア規模で見ると、タウン誌などの地域メディアと大規模メディアは、大きく違う。ところが、年間売り上げ3000億円を誇る大メディアも、通信インフラ事業者と比較すると、これまた一桁も違う。結局、勝ち残るのは、生活者の支持、環境の変化に対応できるメディアである。そうなれば、顧客起点に立った元気な地域メディアや通信事業者の動きが面白くなる。

 これまで、マスメディアは、視聴率、聴取率、発行部数などを唯一の企業力の指標としていたが、生活者主導になると“生活者起点の情報ニーズ指標”になる。本来地域メディアは、地域において、事実を知らせる“報道”の役割と“豊かな生活文化創りに貢献する”ことが役割である。即ち、地域メディアは、生活者と価値観を共有し、生活者の代理人になり、“生活者目線”で情報収集と発信をすることが求められるのである。

 インフラが整備されても結局は、コンテンツが重要であることはいうまでもない。地域メディアはコンテンツの宝庫である。地元密着のメディアは、マーケット知り尽くしていると同時に、顧客視点で新しいコンテンツを作り出せる。地域メディアは、地域の生活文化の創造、地域の産業発展支援と役割は多く、今後、ますますその重要性を増すだろう。

(2004.11.22/縄文コミュニケーション 福田博)